Volatimeshipを用いた香り立ちのリアルタイム測定 柑橘類編
はじめに
“香り”は、食品や飲料の美味しさを感じる上で大切な要素の一つである。
香り、つまり食品や飲料からの揮発性成分の分析には、従来よりGC-MS (gas chromatograph-mass spectrometry) が用いられている。GC-MSは、微量な揮発性成分を分析できる優れた分析手法であるが、秒単位の揮発性成分の経時変化(フレーバーリリース)を測定することには適していない。
DART (Direct Analysis in Real Time) イオン化法は、直接イオン化法のひとつであり、揮発成分を大気圧下でリアルタイムに検出することを可能にする。さらに、揮発性成分分析用デバイス“Volatimeship”を用いると、揮発性成分を効率よく質量分析計 (MS) に導入できるため、高感度な測定が可能となる。
本報では、セパラブルフラスコと圧搾棒を利用し、柑橘類の圧搾時の香り立ちをリアルタイムに測定した結果を報告する。
Figure 1. 実験装置の模式図と写真
(A) 模式図 (B) 写真
試料
湘南ゴールド オレンジ
方法
分析システムは、DARTイオン源と質量分析計(島津製作所 LCMS-8030)の間にVolatimeshipを接続して構成した (Figure 1)。
試料のサイズが大きかったため、セパラブルフラスコを使用することとした。試料をセパラブルフラスコに入れ、Volatimeshipに接続し、Backgroundを測定した後、圧搾棒で試料全体を押し潰し、圧搾時の香り立ちを測定した。
MRMの設定は、テルピネンが170>153(プリカーサーイオン>プロダクトイオン)、リナロールが154>81、リモネンが135>107、テルピネオールが137>81である。
結果
テルピネン、リナロール、リモネン、テルピネオールのMRMの測定結果をFigure 2に示した。
柑橘類を圧搾時の香り立ちを秒単位でリアルタイムに検出することができた。
また、Volatimeshipは、測定したい試料の大きさや形に合わせて装置を組むことができる有用性がある。
Figure 2. 柑橘類の香り立ちの測定結果 (MRM)
(A) テルピネン (B) リナロール (C) リモネン (D) テルピネオール
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