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パッケージ付着物の直接分析

アプリケーション

はじめに

化粧品は中身だけでなく容器や外箱まで含めて価値ある商品であると認識されている。お客様より「外箱にシミがある」というご指摘があった場合には「シミの正体や付着した原因」などを回答する必要がある。そのためには「シミが何か」を機器分析を用いて調べることとなるが、紙に付着したシミの分析は抽出法や分析手法の選択の点で難しい。今回、ionRocket DART-MSを用いて紙製の外箱に付着したシミを前処理を行うことなく直接分析を行い、シミが何かを推定した事例について報告する。

試料

・シミの付着した紙製の外箱(Fig.1)

方法

分析システムは、DARTイオン源と質量分析計の間にionRocket(昇温加熱デバイス)を接続して構成した(Fig. 2)。 外箱のシミ付着部位を約2mm角に切出してPOTに入れ、室温から600°Cまで100°C/minで昇温加熱しながら質量分析を行った。 また、シミの無い部位をリファレンスとして同様に測定し、差分解析ソフト(Spectra Scope)の自動差分解析機能(Intelligent Data Subtraction;IDS)を用いてシミ部位に特異的なMSピークの検出を行い、シミの原因を推定した。

結果

参考としてFT-IRの結果をFig.3に示すが、シミ部位を測定してもリファレンスである紙そのものとほぼ同様のスペクトルが得られるだけで成分的な情報を得ることは出来なかった。Fig.4に、ionRocket DART-MSで測定したデータ(TIC)を示す。TICの各データポイントにはMSスペクトルが格納されているが、これらのMSスペクトルをマニュアルで比較することは現実的ではない。そこで、このデータをIDSにより解析を行い下表に示すような差異成分が自動抽出された。
このうちm/z 195.09はMS/MS測定の結果からカフェインであると推定されたため(Fig.5)、「シミはコーヒーやお茶類などが付着したもの」であり、少なくとも製造工程や配送行程中で付着したものではないことが確認された。

 

 

<IDSの仕組み>
①100°CごとのMSスペクトル同士を差分し、差異ピークを抽出する。 (差分スペクトル=「シミ部位」-「リファレンス」)
②差分成分ごとにEICの面積値を比較し、一定以上の残存率(Remaining) があるものが最終的に差異成分としてアウトプットされる。このように本手法を用いることで、紙に付着したシミ成分の情報を抽出等の前処理を行うことなく得ることが出来る。また、IDSによってマニュアルでのスペクトル解析を行うことなく自動で差異成分を検出することが出来、さらに、MS/MSスペクトル解析を行うことで、具体的な成分を特定することが出来るため、シミの原因推定が可能となる。そのため本手法は、品質保証あるいは品質管理への応用が期待される。

 

 

 

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