多成分混合マススペクトルからの成分の同定 | 理化学製品の株式会社バイオクロマト | 理化学製品の株式会社バイオクロマト

多成分混合マススペクトルからの成分の同定

アプリケーション

はじめに

近年、DARTをはじめとしたアンビエント分析が広がってきているが、その特徴として前処理不要で直接・簡便に測定できるという点があげられる。アンビエント分析ではカラムによる成分の分離が行われないため、得られるデータは多成分混合のマススペクトルとなる。
我々は多成分混合マススペクトルの解析を容易に行うため、混合マススペクトルから、一度に複数成分を検索・同定できる新しい検索ソフト(DiscoveryM)を開発した。
今回、DiscoveryMを用い、樹脂材料中からのフタル酸エステル類の
同定を行った事例を紹介する。

 

方法

DART-MS分析用昇温加熱デバイスであるionRocketを用いてナイロンの分析を行った(Figure 1)。1mm角程度のナイロンをPOT(試料台)に入れて測定に供し、ionRocketの昇温加熱条件は、室温から600 ℃を100 ℃/minにて昇温する条件とした。測定後、得られたマススペクトルに対して、一般的な検索ソフトとは逆の手順で、格納されているライブラリーデータを多成分混合マススペクトルに照合していき、混合マススペクトルの中に含まれている成分を同定した(Figure 2)。
なお、DiscoveryMにより同定された成分に関しては、精密質量から求められる化学式により検証を行った。

 

 

 

結果

Figure 3上段に室温から600 ℃までのトータルイオンカレントグラムを示した。この中には多成分が混合されたマススペクトル情報が含まれている。Figure 3下段に添加剤が検出される温度帯である200℃付近のマススペクトルを示した。

 

 

 

上記マススペクトルデータに対してライブラリー検索を行なった結果、可塑剤のDi(2-ethylhexyl)Phthalate (DEHP)、Dibutyl phthalate (DBP)、難燃剤のTris (2-chloropropyl) phosphate (TCPP) が同定され、試料にはそれらが含有されていることが確認された(Figure 4下段)

このように、複数の成分が混在しているマススペクトルにおいても、ライブラリーに登録されている個々の成分を同定できたことから、DiscoveryMはアンビエント分析のデータ解析を容易にする有用な手段の一つであると考える。

 

 

なお、DEHP及びDBPは新たにRoHS指令の制限対象物質として追加された物質であり、ionRocket DART-MS分析では、抽出などの前処理が不要であることから、DiscoveryMと組み合わせて用いることにより、これらの物質の含有の有無を迅速に調べる簡易スクリーニング手法としても有用であると考える。

また、DiscoveryMは、DARTなどのアンビエント分析以外にもLC/MSやGC/MSでの不分離ピークに対する検索にも応用できるため、分析後に目的成分の有無を確認するスクリーニング的な使い方も期待される。

 

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