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潤滑油の劣化評価

アプリケーション

はじめに

潤滑油は、機械設備が円滑に動作する上で必要不可欠なものであるが、酸化や機械的せん断、あるいは水分などの外部異物の混入による劣化は避けることができない。前報(JI-025潤滑油の直接分析)において、ionRocket DART-MS分析によって複雑な分離前処理操作を行うことなく、潤滑油の基油と添加剤が分析可能であることを明らかにしたが、本報では、実車走行後の劣化潤滑油を用いて潤滑油の直接分析による劣化評価を行った。

試料

潤滑油:走行距離0 km(新車納入時)、1000 km、5000 km

 

 

方法

分析システムは、DARTイオン源とQ-TOF型質量分析計の間にionRocket(昇温加熱デバイス)を接続して構成した (Figure 1)。潤滑油1μLをPOT(試料台)に入れて測定に供した。ionRocketの昇温加熱条件は、室温から600 ℃を100 ℃/minにて昇温する条件とした。

 

 

結果

添加剤検出部(m/z 250-450 における3Dマップ)をFigure 2に示した。走行距離0kmから1000 kmは、添加剤成分の量比に大きな差異は認められないが、5000 kmでは、サリチル酸エステル系清浄分散剤とフェノール系酸化防止剤の減少が認められた。

次に、基油検出部(450 ℃におけるマススペクトル)をFigure 3に示した。走行0 kmでは主として基油が検出されたが、1000 kmからは、基油の他にグリコール成分も検出されはじめ、5000 kmでは、グリコール成分の増加が認められた。また、走行距離の増加に伴い基油成分の分布が変化していることが認められたため、これらを詳細に構造解析することで、基油の劣化状態を把握できる可能性があると推測する。

本分析手法を用いることで、潤滑油の劣化状態を簡便に把握できることが示されたことから、潤滑油の劣化評価および機械設備の保守管理への適用も期待できる。

 

Figure 2. 潤滑油・添加剤検出部(m/z 250-450 における3Dマップ)

 

Figure 3. 潤滑油・基油検出部(450 ℃におけるマススペクトル)

 

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